Plan
今年度は、混沌とした新時代が抱える社会課題と医療がどのように関わるべきか、即ち、医学とは現代社会において何であるかを考察することを大きな目的として据え、以下の6つのテーマに基づいて活動を行います。
01
中国・漢方医学への理解
日本医療が基づいている西洋医学に対し、中国で根付いている東洋医学は治療の特徴が異なり、人間の自然治癒力を高めることで治癒を目指すことを特徴としています。その東洋医学が日本に入って発展したものが漢方医学ですが、中国とは異なる独自の発展をしてきたために、もとは同じものであるが考え方が異なっています。今回の訪問を通じて中国医学について、それにとどまらず広く東洋における医療、医学について学ぶことで、より深い漢方医学の理解へとつなげていきたいです。
02
中国の医療制度
公衆衛生制度視察
中国では公務員を除くほとんどの国民は医療費用を全額自己負担しているため、経済改革以降の物価の高騰に伴う医療費の高騰し、また、医療資源や医療人材の慢性的な不足といった課題もあり、現在の制度が問題視され始めています。
公衆衛生制度関連ではバクテリアや産業が生む化学物質によった汚染を取り除いた水を国民に供給することが差し迫った課題となっているようです。2000年代から下水処理に関する公共事業を国として進めています。また、食品の安全や大気汚染やなどもメディアで取り上げられることが多く、中国国民の不安の種になっています。私たちは国民皆保険制度が整備され医療資源や水道水が飲めることを当然のものとしていますが、今回、海外の医療制度に触れることで、日本の医療制度を客観視する機会としたいです。
03
中国の学生との交流
我々は医の道を志し医学部に入って勉強しているが、社会的背景によって医者に求められるものは非常に異なります。特に中国は日本と近く古来から交流があり共通の基盤を多く持つ一方で、資本主義や社会主義、自由主義と共産主義など社会制度としてのイデオロギーが非常に異なることもまた事実です。このような国の学生と理想の医者像やなぜ医者を目指そうと思ったのか、病気に対する考え方や将来のキャリアプラン、社会における医者の立ち位置などを話すことは、お互いの考え方の違いや当たり前だと思っていた自分たちの医療に対する考え方の独自性を再認識できると思い、中国での学生との交流を希望します。また、交流の中でコミュニケーション能力を培い、今後より促進していくであろう医療のグローバリゼーションに対応できるように目指していきたいです。
04
シンガポールの医療制度
現在のシンガポールの医療制度を含めた社会保障制度の基本理念は「自助努力」です。この理念はGDPに対する国民医療費負担比率の低さに反映されており、経済協力開発機構(OECD)加盟の先進34か国の平均値が9.5%であるのに対しシンガポールはその約半分の4.0%となっています。この理念の下1984年、新設された医療積立金制度がMedisaveです。Medisaveとは国による医療積立金制度でありシンガポールの国民は毎月給料の6%から8%まで中央積立基金(CRF)という組織に積立が義務付けられています。この積立は入院時や高額な医療費の支払いが必要な場合に支払われ、基本的に診療料金の補助が国から受け取れることはないです。このように個人の積立による個人口座を個人で利用するという観点から、医療費の抑制や医療サービスの質で医療機関を選択する傾向も生じ、これらはシンガポールの高い医療サービスの質を支える一つの要因になっていると考えられます。またMedisaveに加え、低所得者向けの医療費扶助制度であるMedifund、高品質な医療サービスを求めるものに対してはMedishieldを軸とした任意保険を創設することで、国民のニーズを満たしています。日本の医療制度と異なる国の医療制度を比較することで、日本の医療制度の利点や欠点を見直していきたいです。
05
シンガポールにおける医療現場
シンガポールでは、英語圏の人々、中国系、マレー系、インド系など実に多くの人種の人々が生活しています。また、観光客も多く訪れ、様々な国籍、背景、宗教を持った幅広い患者さんに対して、医療現場ではどのように対応しているのか、そしてどのような医療制度が機能しているのか、非常に興味深いです。さらに、シンガポールはアジアの中で裕福な国として知られ、日本と近い立場にあるため、そのような点でも何か参考にできることがあるのではないかと考えました。
06
シンガポールの医療教育
我々は日本でしか医学教育を受けたことがなく、他国ではどのような医学教育が行われているかほとんど知らないです。また、以前は世界トップと言われた日本の学力はある調査では現在世界4位となり、そして1位はシンガポールとなっています。この交流を通し、シンガポールで行われている医学教育を視察して日本のものと比較し、我々の医学の学び方の長所や短所、足りない点を見つめ直し、よりよい医師になるための今後の学習に生かしたいです。